そこが知りたい!ニュージーランド不動産 ニュージーランド不動産コンサルタント そといし やよい著

ニュージーランド不動産動向や最新情報を不動産コンサルタントがお伝えする コーナーです。
 
Let's 投資 知識編
交渉する為のヒント 弁護士の使い方と役割

金銭と物件の引渡しに仲介ブローカーは知らん顔?

日本の不動産仲介であれば、不動産代理店の宅地建物取扱主任者立会いのもと、行政書士を交えて代金決済等を行いますが、ニュージーランド不動産の所有権移転には仲介ブローカー(MREINZ)はその場に一切関与しません。 
つまり、仲介ブローカーは契約を基本合意に導くまでが職務なのです。  
契約が合意に達した後、仲介ブローカーに相談を持ちかけたら、「あなたの弁護士に聞いて…」と執りあってもらえなかったという不満を持たれる方もいらっしゃいますが、この仲介システムやNZの流儀を説明すると納得されます。

弁護士(ソリシター)は登記事項や契約のご意見番

NZの弁護士は2つの名前で業務内容を区別しています。 1つは主に法廷で活躍するバリシター、そしてもう1つが、依頼人の懸案事項に従って主に渉外的な仕事をするソリシターです。 多くの方が抱く弁護士のイメージは前者のバリシターですが、不動産の所有権移転や遺書などを取扱うのはソリシターで、日本の行政書士、公証人役場が取扱う仕事の殆どもソリシターの業務です。 
NZの日常生活において、何かの節目に登場願う弁護士がソリシターと言えましょう。 

ところで、バリシターもソリシターも、弁護士は依頼者の利益と権利保護を守るのが務めですが、そんな彼らを「ドクター(Dr.)」とか「サー(Sir)」と呼んだり、弁護士に敬意を込めて「先生」と呼ぶ様な習慣はありません。 依頼人と依頼者とのより良い関係を築く上で、私はNZ流儀を推奨します。

不動産売買における弁護士費用はハウ・マッチ?

売る場合、買う場合で費用は異なりますが、不動産の所有権移転手続きをごく一般的な弁護士事務所に依頼した場合、基本料金は$1,000以下で、追加事項や対応が必要となった場合でNZ$1,500(日本円で10万円前後)を超える事はないと思います。 
弁護士費用の支払いは、買う場合であれば、残金決済にプラスして前払い、売る側であれば、代金決済分から報酬分が相殺されます。

費用が追加される項目としては、「作成した書類の枚数」や、「対応(返信など)が迫られた事項の数」で変わります。
不動産の所有権移転手続き上、最も重要な部分は登記の記載内容の確認です。
依頼人が所有していたコピーがあったとしても、弁護士は発行元から直接コピーを入手して、現状の確認を行います。 
また稀に、地役権に私道を通過する権利が確定されていない等、記録と実際の状態とが矛盾を見つけ出し、訂正することも彼らの任務です。

所有権移転手続きは弁護士の独占業務ではない

数年前からコンヴェイアンスという移転手続を専門に取扱う業者(ランドブローカー)も弁護士同様の業務をこなしており、彼らは弁護士が担当する部分よりも多少広く扱う人もいます。 金額的にどの程度違いがあるかは定かではありませんが、弁護士報酬が高いと思われる方は問い合わせては如何でしょうか。

弁護士を選ぶコツ

究極的なコツはありませんが、意思の疎通が図りやすいか否かの確認と、弁護士報酬について確認することが重要です。 不動産の所有権移転業務は比較的容易な為、弁護士なら誰でも執り行えますが、著名な法律事務所や法廷専門の弁護士に依頼するよりも、不動産法を専門としている弁護士から選ぶのも一考です。 時折、依頼者の利益よりも、自身の法律的解釈を前面に押し出し、実務と離れたプレイを繰り広げてしまう弁護士の存在見受けられます。 そのような場面に遭遇しますと、仲介ブローカーの立場からは何もコメントできず、歯がゆさだけが残ります。 そうなってしまうと、双方の弁護士間で書面がピンポンゲームの如く往復します。 依頼者側にとっては、何が何だか訳が分からなくなり、弁護士費用だけが膨らみます。
何でも法律の定規で論争しようとする弁護士よりも、依頼人の実益を守り、損害を最小限度に抑える事を考える臨機応変さや機転を利かせられる弁護士をお奨めします。 

弁護士協会のサイトから検索してみるのも良いでしょう。
http://www.propertylawyers.org.nz/wcontent2.asp?ID=100000239&parentID=undefined

紹介された弁護士は信用できない?

仲介ブローカーが紹介する弁護士は何か、利害関係で癒着があるのではないかという懐疑的な意見も見受けられますが、日常的に多くの弁護士と繋がりがあります。
仲介ブローカーはさておき、弁護士に仮にそのような行為があったとするならば、業務怠慢となります。
但し、紹介され代理人として指名した後は、依頼人の意思と責任で決断したという自覚は必要です。 また、業務を依頼している過程で、万一不都合が生じた場合には、弁護士を罷免する事も可能です。 最初に提示された金額と請求金額に大きな開きがあり、業務内容に疑念があれば弁護士協会へ問い合わせる事も可能です。
弁護士にはその為の保険も用意されているのがNZです。

日本語訳は必要か

契約内容の全てを日本語で理解したいという気持ちは理解しますが、実際に有益性は薄いと理解しておいて下さい。 費用の無駄でもあると思います。 
コル・ワールドサービスでは、弁護士との面談に通訳として同行し、単純通訳としてだけではなく、ご依頼者がより深い理解を得られる様、NZの商習慣や法律の概略等も補足させて頂いており、相談途中からのご依頼にも迅速に対応しております。 

委任状を作成しておくメリット

所有権移転日まで、署名が必要となる書類がいくつかあります。 不動産購入契約時にその全ての書類が揃えられ、決定していればよいのですが、契約者ご自身の署名が必要となるのは、所有権移転日の直前であることが殆どです。 特に、住宅ローン申請書はその代表例です。 NZ非居住者の場合、その都度渡航すること自体に無理がありますし、書名にもスピードが要求されます。
そんな方は、予め弁護士に委任状を託されておかれれば便利です。
弁護士はファックス等で署名する事に同意した旨の確認がなければ、勝手に代筆することはありません。
委任状のスタイルは全権委任と限定的委任と2通りあり、通常は全権委任の内容で作成しておきます。 委任状の費用は弁護士によって異なりますが、90〜120ドル程度ですので、NZにご滞在される期間中に作成しておかれるのが便利です。
尚、日本に居ながらも委任状の作成も可能です。 但し、NZ国外から委任状を作成する場合、ステップが異なりますので、詳しくはお問合せ下さい。

お知らせ:
日本からの電話によるお問い合わせ需要にお応えして、ジャパンホットラインを開通致しました。 回線が繋がるまでに多少時間が長くかかりますが、国内電話の感覚でお気軽にお問い合わせ下さい。 (050)5534 8080


追伸: リンクミー内でブログを開設しました。
 
2006年7月29日 記
 

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著者紹介
そといし やよい
(Koru World Services 代表 NZプロパティコンサルタント 兼 仲介ブローカー REINZ正会員)

現在、最もアクティブなNZプロパティコンサルタント
ニュージーランド不動産を日本語で分かりやすく解説したウェブサイト「ニュージーランド不動産A to Z」の筆者。
オークランドの大手デベロッパーであるトニーテイグループの日本マーケット代表を務める傍ら、一般の不動産売買を行う仲介ブローカーとして、業界最大シェアを誇るBarfoot & Thompson Ltd. で初の日本人セールス・コンサルタントでもある。
通常のブローカーは限られた地域に限定して活動するが、刻々と変わるオークランドの広域市場を常に把握するコンサルタントであり続ける為に、あえてエリアを限定しないという厳しい課題を自身に課している。
丁寧で納得のいく説明とアフターフォローは、買い手からも売り手からも好評であり、彼女を頼るキーウィのクライアントも急増中。信頼度と期待感は更に厚くなっている。