●デフの英語
さてさて前回、英語のお話をしましたが、みなさん、ここはニュージーランドです〜。私が普段使っている言葉は、主にニュージーランド手話ですが、もちろん世間は英語がメインなわけで。私もそれなりに英語を使います。最近、何人かの日本人の方から「どうやって英語をマスターしたか?」と聞かれたので、この場を借りてちょびっと説明。あ、でも私、全然ぺらぺらじゃないですから。そこんとこよろしくね〜。

一般に「英語の習得は耳から」、と言われていますね。日本でよく見かける広告、英語学校の宣伝…、ほとんどは「耳から」となっています。耳を訓練しよう!ひたすら英語を聞こう!ヒアリングが一番効果的!耳を英語耳にして、初めてしゃべれるようになる!…とかね。

ええ〜っ!?まじー?じゃあデフは一生かかっても英語をしゃべれるようにはならないのね〜。…ってな結論が出ちゃいましたよ。あららー、残念でした。デフの皆さん英語を学ぶのはあきらめましょう…!!

ちょっと待った!!そうは問屋が卸しません!(古っ!)本当にそうですかね?確かに耳が聞こえるほうが、聞こえないよりははるかに情報量が多いし、有利でしょう。だけど、デフには鋭い目と、ずば抜けた直感力があるぞ!!

私はまず手話から入りました。ニュージーランド手話は日本の手話とはまったく違いますが、同じ視覚言語です。言語形態や文法は似ています。そのニュージーランド手話をマスターする過程で、必ず英語は入ってきます。
  デフは普段、相手の口の形を見て会話しますが、それは英語でもそうです。日本語には「あいうえお」の5つの母音しかありませんが、英語には30もあるんだって!?いや、実は言語学者の間でも見解がいろいろあるようで、んだけど日本語よりはるかに多いことは間違いありません。

ってことは!?そう。口の形を読む、読唇が非常に役立つんです。そしてこの読唇は発音の練習にも役立ちます。口の形や舌の位置を覚えればかなりネイティブに近い発音ができちゃうんだな。いや、もちろん完璧じゃないですよ。デフの多くは子音がほとんど聞こえないので、子音が正しく出せるようになるには、かなりの訓練が必要だと思います。でもそれができるようになれば、日本人がしゃべるカタカナ英語よりは、かなりいけちゃいます。

あとはひたすら英文を読むことですね。なんでもいいからとにかく「目」から英語漬けになることです。ニュージーランドにいるみなさんなら、その辺に転がっている物でも、英語が書いてあれば目にしてみること。日本にいる皆さんなら、英語の本はもちろん、DVDを英語の字幕つきで見るなどの工夫をしましょう!英語に見慣れると、ちょっとしたセンテンスなら、ぱっと見ただけで入ってくるようになります。ほら、日本語が自然に入ってくるように。

この話を聞こえる友人にしたら、「目からうろこ!」だって。実際彼女は英語力の上達に悩んでいたのですが、これらの方法でかなり救われたと言っていました。ってわけで、聞こえる皆さんもこの方法をお勧め!耳にばっかり頼らないで。英語は耳から!なんてうそうそ。あ、言っちゃった!「目は口ほどに物を言う」…って奴さ。(ちょっと…、いや全然ちゃうわ!)

著者紹介

香坊(かおぼう)
デフ。初めて訪れたニュージーランドに一目惚れし、永住権獲得に挑戦する。長い道のりを経てついに2004年6月、永住権獲得。現在、オークランドにあるKelston Deaf Education CentreでLanguage Assistant、地元のコミュニティーセンターでNZ Sign Language 講師をしている。
ニュージーランドと日本の聴覚障害をもつ生徒同士の交流を企画中。だけど先は長い…??今は、しわくちゃな愛犬の、聴導犬(もどき?)訓練をすることが一番の楽しみ。愛犬のブログ http://blog.livedoor.jp/kaobounz/


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